ワンルームマンションで民泊が難しい理由
旅館業法の簡易宿所についてフロント要件、面積要件が緩和されたにも関わらず、ワンルームマンションでの民泊許可がほとんどおりていないというのはなぜなのでしょか?
ワンルームマンションで民泊を始めるにあたってのハードルとなる部分を説明していきたいと思います。
用途変更の問題
ワンルームマンションの場合、「共同住宅」という建物の用途になります。民泊施設として利用する場合はホテル・旅館への用途変更が必要となります。
共同住宅という用途で建物を利用する場合は工業専用地域以外の11地域に建築可能です。一方、民泊施設として利用をする場合の用途はホテル・旅館となりますので、第一種住居地域(3000㎡未満)から準工業地域の6地域にしか営業することが出来ません。
つまり、ワンルームマンションが建っている場所がホテル・旅館の用途利用が出来る地域でなければ、用途変更が出来ず、民泊を行うことも出来ないのです。
消防設備の問題
ワンルームマンションのような共同住宅の一部で民泊を始める場合、建物全体の延べ床面積と民泊として利用する部分の割合によって、必要となる消防設備が異なってきます。
延べ面積が500㎡以上のマンションであれば、ホテルや旅館と同じように自動火災報知設備を設置する義務がありますので問題ないのですが、延べ面積が500㎡未満300㎡以上で民泊部分が1割を超える場合は、建物全体に自動火災報知機設備が必要となります。
この場合は各部屋に自動火災報知機設備を取り付けなければいけないため、一部屋だけ民泊として旅館業の許可をとるのは難しいといえます。
管理規約の問題
マンション管理規約といって、マンション内での憲法のような規定があります。
管理規約はそれぞれのマンションで作成するのですが、この管理規約は、標準管理規約をモデルとして作成されています。
ほとんどのマンションの管理規約は、この標準管理規約をそのまま転記をするか追記をして作成されています。
民泊が脚光を浴びだしたのは最近ですので、それ以前の標準管理規約には、民泊を禁止する旨が明記されていません。
但し、マンション標準管理規約の第12条で区分所有者は、その専有部分をもっぱら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならないという記述があります。
これは、住宅専用としてしか使えないので、部屋を貸し出して営業するような民泊には使えないとの解釈も出来るのですが、本来、民泊というのは自宅を人に貸すというものなので、住宅として使用しているんだという意見もあります。
そこで、民泊禁止を明記した管理規約の改定を行うマンションがここ最近増えてきました。
新築のマンションはもちろん、既存のマンションの管理規約にも不特定多数に宿泊・滞在目的で使わせてはならない、部屋を宿泊施設として使ってはいけないといった規定を追加するマンションが増える可能性もあります。
このように、マンションの管理規約で民泊を禁止された場合、いくら用途変更をし、消防設備を設置したとしても民泊の運営をすることができません。
なお、管理規約は改定をすることも可能です。なので、現時点で、管理規約の中で民泊が禁止されていなくとも、あとから管理規約の改定で民泊が出来なくなってしまう可能性もあるので注意が必要です。