営業保証金制度等による弁済対象から宅建業者を除外

 第27条(営業保証金の還付)

宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する。

 

弁済業務保証金制度は、営業保証金制度とあわせて宅建業者に対する一般社会の信頼度を高めるとともに、不動産業界の集団保証による消費者の保護と宅建業者の負担軽減を図るために設けられた制度です。

一方で、現行の条文では、「宅建業者と宅地建物取引に関し取引をした者」が宅建業者の場合(業者間の取引)にも27条の規定が適用でき、理論的には業者間の取引により損害を受けた宅建業者が営業保証金から弁済を受けることが可能でした。しかし、不動産業界の状況や制度について熟知している宅建業者がいち早く還付請求を行うなど、消費者が十分な救済を受けられない事態が発生することもありました。

そこで、改正宅建業法では、宅地建物取引業に関する取引により生じた債権に関し、弁済を受ける権利を有する者から、宅建業者である者を除外し、一般消費者に限定することになりました。業者間の取引は、不動産取引のプロ同士の取引であり、自らの責任で行わなければならないということです。

 

この改正により、不動産取引により損害を被った消費者の確実な救済が期待されます。

 

業者団体に対し、従業者への体系的な研修を実施する努力義務を賦課、法75条の2の新設

第75条の2(宅地建物取引業者を社員とする一般社団法人による体系的な研修の実施)

宅地建物取引業者を直接又は間接の社員とする一般社団法人は、宅地建物取引士等がその職務に関し必要な知識及び能力を効果的かつ効率的に習得できるよう、法令、金融その他の多様な分野に係る体系的な研修を実施するよう努めなければならない。

 

従来からも宅地建物取引業法64条の6により、宅地建物取引業保証協会に宅建士に対する研修実施が義務付けられていますが、今回の法改正では、全日本不動産協会をはじめとする宅建業者団体に対し、宅建業に従事する人たちに対する体系的な教育を実施するよう努力義務が課されました。また、団体の組織力を生かした従業者への教育の一層の充実・強化を図るとともに、その確実な実施のために、保証協会による、教育に要する費用の助成を可能にすることも盛り込まれました。

 

この背景には、平成27年4月1日から施行された改正宅建業法で「宅地建物取引士」へと名称が変更となり、以前よりも高い専門性が期待されるようになったことが挙げられるでしょう。研修も不動産知識のみならず、法令、金融、税その他多様な分野について体系的に行うこととされており、業界団体には宅建士のために体系的・業務横断的な研修プログラムの策定と実行が期待されます。