法律が認めても条例が許さない(法律より厳しい条例規制【上乗せ条例】の問題)

上乗せ条例とは、法律で規制されているものと同一の対象について、法律よりも厳しい基準を課す条例を意味します。

旅館業法の規制緩和により宿泊者数が10人未満の小規模な施設の場合は、フロントの設置を不要としました。

しかし、旅館業法上はフロントの設置が不要になったからといって、フロント設備なしで簡易宿所営業として民泊が可能であるというわけではありません。民泊を開業しようとする場所の自治体が制定した、旅館業法に関する「条例」にそった簡易宿所である必要があります。

例えば、文京区旅館業法施行条例を見てみましょう。

(ホテル営業の施設の構造設備の基準)

第七条 旅館業法施行令(昭和三十二年政令第百五十二号。以下「政令」という。)第一条第一項第十一号に規定するホテル営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。

一 宿泊者の利用しやすい位置に、受付等の事務に適した広さを有する玄関帳場又はフロントを設置すること。

(簡易宿所営業の施設の構造設備の基準)

第九条 政令第一条第三項第七号に規定する簡易宿所営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。

一〜五 (略)

2 (略)

3 第七条第一号、第四号イ及び同条第五号から第十号まで並びに前条第一項第一号の規定は、簡易宿所営業の施設について準用する。

以上のように、東京23区内の大半では旅館業法の規定より厳しい上乗せ条例を制定しています。したがって、法律が改正されただけでは、そのような条例が改廃されない限り、民泊が実質的に解禁されることにはなりません。旅館業法が緩和されたからどこでも民泊が実施可能になったのだと考えず、民泊を実施しようとする地域の条例を詳細に検討する必要があります。